CREST デジタルパブリックアートシンポジウム

※終了しました

 パブリックアートとはパブリックに対して開かれた性格を有するアートのことを指し、一般には公共空間におかれた彫刻や抽象オブジェのような芸術作品をいう。パブリックアートは屋外に置かれることや、不特定多数の人々に見られるなど、ミュージアムのような制御された空間の中での展示を前提としないため、アートとして頑健性を持たなければならない。現在メディアアートはアートとしての地位を着実に固めつつあるが、この件に関する限り、残念ながらそれだけの頑健性を持つにはいたっていない。

 独立行政法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究プロジェクトである「デジタルパブリックアートを創出する技術」プロジェクトでは、パブリックアートの領域にさらに高度なメディア技術を持ち込み、より豊かな表現の可能性をもとめることによって、「デジタルパブリックアート」とでも呼べる新しいメディアアートのジャンルを確立することを目的とし、さらにその基盤となるような技術を開発することを目指している。

本プロジェクトしては、パブリックアートの魅力を(1)ある種のコミュニケーション空間を作り出す空間性、(2)彫刻などの有する実体としての迫力と存在感、(3)自己参加による作品への興味の向上の3点であると分析し、まずはそのおのおのについて基盤技術の整備と表現手法の探索を研究テーマとして掲げることとした。

本プロジェクトの特徴のひとつは、パブリックアートという領域の設定や上記の研究テーマの設定を最初からアーティストのグループと共同作業しているところにある。アートの側から見て興味深いこの領域であるが、これは同時に屋外の広域なスペースにおけるコンピュータの使用など、技術の側から見ても興味深い問題設定になっている。技術と芸術の融合が叫ばれる割には新しい成果に乏しいのは、組み合わせの方法論についての議論が少ないからだと考えられる。今回は十分とはいえないまでもひとつの方向性を示すことができたと思っている。

プロジェクトの成果は、デジタルメディア技術がわれわれの社会に浸透し生活と不可分になっていくにしたがって、これは新しいコミュニティスペースの創出、さらにいえば、21世紀の都市景観、都市構造の提案にも影響をもたらしていくものと期待される。本シンポジウムは、「デジタルパブリックアート」という新しいメディアアートの概念とそれに関連する技術開発研究の成果を、国内外のアーティストや研究者の方に紹介し、多様なフィードバックを得ることを目的としている。本シンポジウムが、今後のデジタルメディアコンテンツの製作、並びに制作を支援する基盤技術研究の一助となることを願っている。